現代歌舞伎版 ホームコメディ オペラ
フィガロの結婚
歌舞伎は日本の伝統文化の最たるものでありますが、考えてみますと歌舞伎は日本のオペラといえるものでもあります。オペラは西洋で生まれ育った総合舞台芸術で音楽・文学・美術の3要素がすべて含まれているわけですが、歌舞伎もその全ての要素が含まれた総合舞台芸術であります。
昨今、各分野の芸術がクロスオーバーして共同して一つの合作芸術が生まれて注目を集めたりしています。同じ分野の芸術であっても西洋と東洋、昔と今、それぞれの芸術が統合して新しい現代の総合芸術が生まれても当然出しょう。芸術もまさにクロスオーバーの時代を迎えているわけです。
新しいオペラの時代を拓こうとしています東京オペラ協会としましても、是非チャレンジしてみようとこの歌舞伎オペラを完成させたわけです。
200年前のモーツァルトの古典オペラと、日本の古典芸術の歌舞伎を、現代日本の芸術家が再統合して一つの新しい総合舞台芸術を作ったわけです。
具体的には、
モーツァルトの音楽はその儘おおいに活躍してもらって、ややこしい政治風刺の入ったストーリーを、過ちを許し合おうというテーマのホームドラマに。
台詞は、歌舞伎っぽくも音楽的なリズミカルなものに統一し、登場人物に歌舞伎のポーズを一人づつに付け、やはり登場人物は以下のニックネームで呼ばれます。
フィガロ = 天才フィガロ
スザンナ = ああ愛しのスザンナ
伯 爵 = 偉大なお殿様
伯爵夫人 = お優しい奥様
ケルビーノ = プレイケルビーノ
バルトロ = 威張りバルトロ
マルチェリーナ = マルチェリーナオールド
バジリオ = バジリオ気取り
アントニオ = アントニオビール
バルバリーナ = 可愛いバルバリーナ
古典オペラの中に現代へのメッセージを見つけ出してそれを膨らませる、という当会の姿勢がよく現れた典型的な作品に仕上がっております。どうぞお楽しみに!
あ ら す じ
■ 第 一 幕 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(第1場) 愛する二人の新しい部屋で
天才フィガロとああいとしのスザンナは今日が結婚式。二人とも幸せそうですが、偉大なお殿様がああ愛しのスザンナを策略を使って自分のものにしようとしているのを知り、天才フィガロは怒って、いつでも策略ごっこの相手をして差し上げます、と歌う。
一方、マルチェリーナオールドは、天才フィガロに金を貸したときに書かせた“金を返せないときは結婚する”という証文を持っており、かつての情人いばりバルトロに協力を頼み、天才フィガロと結婚しようと計画します。
(第2場) 悩めるお優しい奥様の部屋で
お優しい奥様とああいとしのスザンナが偉大なお殿様のことで悩んでいるところへ、天才フィガロが登場、解決策を示します。それは、お優しい奥様が「今宵お庭で男と忍び会う」と書いた手紙をバジリオ気取りを通じて偉大なお殿様に渡し、一方では、ああいとしのスザンナが、「今宵お庭で会いたい」と彼を呼びだして、実際には彼女の代わりにプレイケルビーノを変装させて偉大なお殿様が来たところを、お優しい奥様が取り押さえる、というものです。
■ 第 二 幕 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(第1場)セレモニーは大広間で
お優しい奥様は、新たな作戦を考えます。ああいとしのスザンナに、偉大なお殿様へのラブレターを書かせ、お庭に呼び出すように申しつけます。今度は自分がああいとしのスザンナの衣装を着ていき、偉大なお殿様を懲らしめようというのです。
さて、裁判で天才フィガロは負けてしまいますが、そのとき何と、天才フィガロは、いばりバルトロとマルチェリーナオールドの子であることが判明し、いばりバルトロとマルチェリーナオールドも一緒に結婚式を挙げることになります。二組の結婚で式は大いに盛り上がりますが、ああいとしのスザンナは偉大なお殿様にそっとラブレターを渡します。それも天才フィガロには内緒で……。
(第2場)逢い引きは闇の樹陰で
ああいとしのスザンナが偉大なお殿様と逢い引きすると思いこんだ天才フィガロは信じられぬと怒っていましたが、それが芝居だとわかって逆にああいとしのスザンナをからかいます。二人がやがて分かり合って仲良くなったところで、偉大なお殿様が出て来ます。
そこで二人は、「お優しい奥様を天フィガロが口説いている」芝居を始め、それを見た偉大なお殿様が怒り狂って皆を呼び集めたところへ本物のお優しい奥様の言葉に感動し、唱和して愛を唱えたあと、皆で仲良く遊ぼうと歌い踊る中、幕となります。
◆ 写 真 集 ◆